「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2023年8月の回答者は、男性更年期や前立腺肥大症などメンズヘルスに詳しい、順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科デジタルセラピューティクス講座特任教授の井手久満先生です。
編集部:井手先生は男性更年期・ED(勃起障害)・前立腺肥大症など男性特有の病気のエキスパート。日経Goodayでも特集「男の更年期、女の更年期」などにご登場いただいています。そんな井手先生に向けて読者からの質問を募集したところ、たくさんの質問が寄せられました。井手先生のご回答を、前編・後編の2回に分けてお届けします。
井手氏(以下敬称略):よろしくお願いします。
編集部:前編では前立腺肥大症に関する質問を中心にお聞きしていきます。ではさっそく最初の質問です。
自分でできる前立腺肥大症の治療法は
前立腺肥大症で夜に目が覚めて困っています。排尿についての薬を飲むのもいやなのですが、薬以外に自分でできるトレーニングなどの治療法はありませんか?(63歳男性)
編集部:今回とりわけ多かったのは前立腺肥大症についてのお悩みでした。前立腺とは膀胱のすぐ下に尿道を取り囲むような形でついている男性特有の器官で、精液に含まれる前立腺液などを作っています(図1)。高齢になり、これが大きくなる病気が前立腺肥大症ですね。
図1 前立腺の位置

前立腺は膀胱の下に尿道を取り囲むように位置するクルミ大の小さな臓器。これが肥大すると尿道を圧迫して、残尿や頻尿などの症状が生じる。(原図=123RF)
井手:そうです。前立腺が肥大すると中の尿道が圧迫され、排尿に時間がかかったり、残尿が増えたり、頻尿になったりします。
編集部:この方は前立腺肥大症による夜間頻尿に悩んでいるようです。薬以外に自分でできる治療法がないかという質問ですが…。
井手:まず気になるのは、この方がきちんと診断を受けているかどうかということです。前立腺肥大症になると確かに夜間頻尿を起こしやすくなりますが、夜間頻尿の原因はそれだけではありません。睡眠時無呼吸症候群、糖尿病、がんなど、ほかの病気が隠れていて、それが原因かもしれません。また慢性的な排尿障害があると、膀胱結石などができることもあります。
前立腺肥大症による排尿障害だとしても、生活改善だけで治すことはできません。もしまだ受診していないのであれば、まずは病院に行っていただければと思います。
前立腺肥大症による排尿障害は、生活改善だけでは治りません。また、夜間頻尿の原因は前立腺肥大症だけではありません。排尿障害が慢性化すると膀胱結石ができることもあります。受診がまだでしたら、まずは病院に行きましょう。
編集部:まずは本当に前立腺肥大症が原因かどうかを確認したほうがいい、ということですね。分かりました。では次の質問です。
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