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食べる!飲む!そして走る…聞きしに勝る「食い倒れレース」東北風土マラソンに参戦 - 読売新聞オンライン

 宮城県北部の登米市で開かれる「東北風土マラソン」は、日本有数の「ユルさ」を誇ると聞いていた。時間に厳しくないうえ、走りながら東北グルメを堪能できるとか。仙台赴任時から気になっていたものの、コロナ禍による中止などで出場機会がなかった。今年、ひょんなことからお誘いいただき、二つ返事で出場したところ、これが想像以上の「食い倒れレース」であった。(メディア局専門委員 原田信彦)

 大会は、県内最大の湖沼「長沼」(周囲20キロ・メートル強)を1周するハーフマラソンと、親子ランなどで構成され、東北のうまいものが集結する「食の祭り」も兼ねている。発着地は「長沼フートピア トヨテツの丘公園」。NHKの朝ドラ「おかえりモネ」のロケ地として有名になったオランダ風車が立つ場所だ。シャトルバスから降りると、丘の上の風車が美しく、植え込みのチューリップとあいまって、日本離れした雰囲気を醸し出している。朝ドラファンにとっては、これを見られただけでも来たかいがあるというものだ。

 会場に貼り出された大会ポスターから、すでにユルさがにじみ出ている。スローガンは「食べる、飲む、走る!」。走るのは二の次ということだろう。ポスターに描かれたギリシャ風ランナーは日本酒の杯を持ってるし、 凱旋(がいせん) 門らしき絵の上には食べ物やら酒瓶やらが並んでおるではないか! 大会の形は、ランナーにワインやステーキが振る舞われることで世界的に有名なフランスの「メドック・マラソン」を参考にしたと聞き、大いに納得した。実行委員会によると、この楽しげな雰囲気に誘われてか、今年は海外を含め総勢約1800人がエントリーしたのだった。

 そもそも普通のマラソン大会は、午前9時とか10時とかにヨーイドンするものだが、本大会のスタートは「午前9時から11時半までの好きな時刻」だ。どうやってタイムを計測するかというと、スタートとゴール地点で、ランナーのゼッケンに印刷された2次元バーコードをスタッフが読み取って判定する方式だ。スーパーのレジと同じである。制限時間も3時間半とゆったり。速い市民ランナーならフルマラソンを走り切れてしまう時間である。脚を痛めるなどよほどのことがない限り、誰でも完走可能な設定だ。

 そんなわけなので、午前9時直前になっても、スタート地点はガラガラ。大きなレースでありがちな、ランナーがひしめきあって緊張感が高まってくる光景はない。バーコードを読み取ってもらって、いざスタート。湖畔の道を快調なペースで走り出した。

 このレース最大の特長は、コースの10か所、ほぼ2キロ置きにエイドステーション(給水・給食所)が設けられていることだ。こんな密度でエイドが配置されている大会は、世界中探してもここぐらいではないか。ちょっと走ると、早くも第1ステーションに到達、岩手名物「南部せんべい」をいただく。このせんべいは大変美味なのだが、口中の水分を一気に奪うので、スタート直後に配置したのは大正解だ。お水ももらう。日本酒の仕込み水だという。なんというぜいたく!

 そんな調子でエイドの「お接待」が次から次へとやってくる。第2ステーションは「青森リンゴ」、第3は宮城名物「笹かま」、第4は「仙台牛カルビ」と秋田の「いぶりがっこ」、第5は宮城県北部の郷土料理「はっと汁」。すいとんに似た料理だが、ダシが利いていてとてもおいしい。

 給食はどれもデパートの試食サイズとはいえ、数が多い。マラソン大会に出るようになって20年以上たつが、走れば走るほどお (なか) がふくれてくるレースは初めてだ。少しペースを緩めなければ。走る速さじゃなくて、食べるほうを。

 第6エイドは福島産「ももぴくるす」。レース後半に入って少し疲れが出てきたところに酸っぱいものを配置するとはありがたい配慮だ。第7は宮城のワカメ入りギョーザ。うまい、うますぎる。第8は福島「なみえ焼きそば」と登米の「甘酒」。なんだか食欲の限界との闘いになってきた。

 コースは自然の湖沼を囲んでいるため、頻繁にアップダウンがある。本気で走れば絶対にバテること請け合いだ。以前は2周するフルマラソンも設定されていたそうだが、今はハーフのみ。走ってみれば納得である。この大会は、あくまでもユルくなくてはと、個人的には思うのだ。ご自宅前に椅子を出して観戦している方から「ガンバレー」の声援をいただく。はい、頑張って走り……いや、食べます!

 第9エイドは仙台名物「牛タン」と、宮城・気仙沼特産のサメ肉を使った「シャークウインナー」。どちらもなかなかの大物である。でも食べる。ああ、おいしい。走り疲れなのか食べ疲れなのか分からぬまま、重くなった脚を動かして最終エイドへ。山形の「ラフランスゼリー」だ。なんとデザートでシメとは! 東北グルメのフルコース、これにて完食である。暑いので、例の仕込み水を頭からざぶりとかぶらせてもらい、クールダウン。最後はぶらぶらジョギングペースでフートピア公園に戻ってゴールした。

 ところが、おもてなしはまだまだ終わらなかったのだ。ゴール後にいただいた袋の中に、なにやら紙切れが。フードフェスティバルの利き酒コーナーで東北の地酒をお 猪口(ちょこ) 5杯飲めるチケットだ。勝利?の美酒まで用意されていたとは! シャトルバスで来てよかったと、心底思った。天国か?

 シャトルバス乗り場への帰り道を少しそれて風車の丘に登ると、東北グルメのブースでにぎわう会場越しに、真っ青な長沼、さらに雪をかぶった奥羽の山々がくっきり見えた。東日本大震災からの復興を願って2014年に創設され、地元の方々が大切に育ててきた大会は、東北の底力が伝わってくる春祭りだ。来年もきっと走りに来て、元気を充電させていただきます。

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