飲む中絶薬胆のう排出まで入院か院内待機 | 中国新聞U35 - 中国新聞デジタル

　人工妊娠中絶の新たな選択肢に、飲む中絶薬が加わりました。従来の手術と比べて子宮を傷つけるリスクを減らしたり、精神的、身体的な負担を軽くしたりすることが期待されています。これまでの方法との違いや注意する点などをQ&A方式で整理しました。（山本真帆）

　Q　どんな薬ですか。

　A　妊娠継続に必要なホルモンを抑え、胎児の成長を止める「ミフェプリストン」と、子宮の収縮を促す「ミソプロストール」という錠剤を時間差で服用します。「メフィーゴパック」という商品名で流通していて、母体保護法で指定された医師のいる有床の医療機関でだけ取り扱えます。

　世界的には飲む薬を使った中絶は1980年代に始まり、今は約80カ国が取り入れています。世界保健機関（WHO）も飲み薬による中絶は、安全な中絶方法として推奨しています。オンラインで診療を受け、薬局で受け取れる国もあります。

　Q　対象は?

　A　妊娠63日（9週0日）以下の人が対象です。特に子宮の奇形などで手術が危険な場合に有効です。日本では妊娠22週未満の中絶が認められていますが、妊娠初期での選択肢が広がります。12週以降の妊娠中期になると、人工的に陣痛を起こし、出産に近い形で手術をします。

　Q　中絶までの流れを教えてください。

　A　製薬会社に登録した医療機関の医師の前でまず一つ目のミフェプリストンを1錠服用します。36～48時間後に二つ目のミソプロストールを左右の歯茎と頰の間に2錠ずつ挟んで30分かけて唾液で溶かします。二つ目の薬を飲んだ後、胎児の入る胎のうが排出されるまでは入院（1泊程度）か院内待機して確認する必要があります。一つ目の薬で胎のうが出て終わることもあります。

　Q　有効性や副作用は?

　A　国内で行った臨床試験では、中絶を希望する妊婦120人のうち112人（93・3%）が二つ目の薬を飲んでから24時間以内に中絶を終えました。子宮出血は一定期間続きます。多くの場合は二つ目の薬を飲んだ後、出血が始まり、胎のうが排出される前後で出血量が増えます。出血がなかなか止まらない、排出がうまくいかない、大量出血した場合には外科的な処置をする可能性もあり、服用後の十分な安全管理が必要といわれています。

　同じ臨床試験では薬の服用後に69人（57・5%）が下腹部の痛みや嘔吐（おうと）など何らかの副作用を訴えました。必要に応じて鎮痛剤が処方されます。重症となることはあまりありません。

　Q　費用は?

　A　人工妊娠中絶は保険の利かない自由診療です。そのため、価格も医療機関が決めます。薬代と診察代を合わせた額は、従来の手術と同じ程度の約10万円といわれています。しかし、既に導入した施設を見ると個室入院が基本で、20万円台半ばとなるケースも出てきそうです。金銭面の負担感は大きいと言えます。

　Q　従来の方法と比べたメリットやデメリットを教えてください。

　A　従来は、子宮内から胎のうなどを金属製の器具でかき出す「搔爬（そうは）法」が主流です。手術は10～15分程度で終わり、異常がなければ入院も要りません。しかし麻酔が必要で、子宮を傷つけ合併症を引き起こすリスクがありました。一方、飲む中絶薬は子宮への負担が少ないのが特長です。ただ、個人差はありますが、一つ目の薬を飲んでから胎のうの排出まで3日ほどかかります。