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「小が大を飲む」巨額買収の勝算は 昭和電工・高橋社長に聞く - 日経ビジネスオンライン

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脱「現金貯め込み」経営 事業再編4つのモデル(5)

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田村 賢司

日経ビジネス編集委員

高橋秀仁(たかはし・ひでひと)氏

高橋秀仁(たかはし・ひでひと)氏

1986年3月、東京大学経済学部卒。同4月、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。92年、コロンビア大学修了。外資系メーカーを経て2015年10月、昭和電工入社。16年1月、執行役員戦略企画部長就任。常務執行役員を経て17年3月、取締役就任。同年7月、カーボン事業部長、20年1月最高戦略責任者。22年1月、社長執行役員に(写真:大下美紀、以下同じ)

旧日立化成(現・昭和電工マテリアルズ)の巨額買収に続き、自社の複数事業と上場子会社の売却で、この2年の間に会社を一変させました。さらに来年からは持ち株会社化して統合を一段と進めます。思い切った事業再編の狙いを改めてうかがえますか。

高橋秀仁・昭和電工社長(以下・高橋氏):私は実は2015年に(メガバンクから外資系メーカーを経由して)当社に入りました。入社前に会社の内容を見せてもらったのですけど、その時に思ったのは、「この会社はポートフォリオカンパニーだな」、ということでした。当時は13の事業部がありましたが、異なる数多くの事業を抱えている会社というような意味です。

 しかし、それらの事業をよく見ると成長事業がないと感じました。ざっと見るとドメスティック(国内の)な事業が多い一方で、日本経済自体はやはり縮小の方向です。とすると、このままやっていっても将来は厳しいねと。M&A(合併・買収)の話があったのは、19年の初め頃だったと思います。

狙うのは「世界で戦える会社」

旧日立化成は、研磨剤のCMPスラリーやプリント配線基板材料の銅張積層板、感光性フィルムなど半導体の後工程に使う材料で世界的に強かった。昭和電工も前工程の高純度ガスなどはありましたが、これで半導体市場で幅広い製品を持てるようになりました。成長市場の半導体を狙ったというわけですか。

高橋氏:その前に1つ話がありました。私が入社してすぐのことです。電気炉で鉄くずを溶かす際に使う黒鉛電極という事業が昭和電工にありました。世界で5社の寡占市場だったのですが、市況が下がってみんな赤字だった。入社してすぐ戦略やM&Aを担当する戦略企画部長になった私は、世界2位の独SGLカーボンからその事業を買収しようとしました。

 当社は世界3位でしたが、買収した後、(需給調整のために)必要なら一部の工場を閉めることも考えたのです。当時はその事業を安く買えました。すると翌17年、(中国が粗悪な鉄鋼生産を規制し始めたことで電炉鋼生産が大きく増えて)黒鉛電極の市況が回復して大きく利益が出ました。これで、うちの財務体質も大幅に改善したのです。

 そこに日立化成の話が来た。半導体が伸びる市場であることは言うまでもありません。だから、当社にとっては大きな買収だったけど、思い切っていけたわけです。これが私のポートフォリオマネジメントの最初でした。

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