みなさんは、「寄付」と言うとどのようなイメージを持つだろうか?
近年はクラウドファンディングやふるさと納税を通じた寄付・支援など、新しい寄付の動きがある一方で、“意識が高い一部の人がすること”といった捉え方がまだまだ根強いことも否めないだろう。
オフィスや多くの飲食店が軒を連ねる東京・赤坂で、「飲めば飲むだけ寄付になる」ソーシャルグッドなバーイベントがひそかな盛り上がりを見せていると聞きつけ、足を運んでみることにした。
イベントに潜入。店内の様子は?
イベントの名前は『KIFUBAR(キフバー)』。通常は別の店として営業しているバーを間借りして行われているイベントだ。
2024年3月某日、雑居ビルの地下に降り、扉を開けると発起人の谷田脩一郎さん(37)やすでに到着していた数名のお客さんが出迎えてくれた。
平日夜の開催だったこともあり、仕事終わりに駆けつけたという人も多かった。
撮影:kagari
開始時刻を過ぎた20時頃、谷田さんの音頭で約10名の参加者が乾杯をしてKIFUBARはスタート。各々がグラスを手に取り、スタッフを交えながら談笑。まだ「寄付」の要素は見えてこない。
それから30分ほど時は進み、さらに参加者が増えてきたタイミングで登壇団体のプレゼンが始まった—— 。
「寄付×バー」。KIFUBAR とは
KIFUBAR発起人の谷田脩一郎さん。普段は人材サービス会社のマーケティング担当として働いている。
撮影:kagari
KIFUBARは、「社会貢献が身近になる社会」をミッションに2017年から月に1度ほど開催されている、参加費・ドリンク購入金額の一部が寄付となる、キャッシュオン形式のBARイベントだ。
発起人の谷田さんは、イベントについて以下のように語る。
「NPOなど社会をよりよくする活動をしている団体の多くは、資金集めに苦労している現状があります。
私たちの身近で活動している団体の存在をまず『知ること』から始めてほしい。そのためには堅苦しく話を聞く場ではなく、お酒を飲みながら気軽に語り合える場が最適だと考え、KIFUBAR を始めました」(谷田さん)
ありそうで無かった、「新しい寄付のカタチ」
では、「楽しくお酒を飲みながら、社会をよりよくする活動を行う団体へ寄付をする」とは実際どのような流れで行われるのだろうか?
KIFUBARでは、参加者がドリンクを1杯飲むと、投票権が1票付与される。
投票はスマートフォンを利用して行われ、参加者はドリンクを飲んでもらった票を寄付をしたいと思う団体へ投票するシステムだ。
ドリンクの原価を除いた金額(約40%)が投票した団体に寄付される。「どの団体も魅力的で迷ってしまう」という人向けには、おまかせ投票機能も。
撮影:kagari
今回のイベントでは、4団体がプレゼンに登壇。
1団体につき約10分の持ち時間が与えられ、ときには参加者からの質問が飛び交う中プレゼンが行われていく。
アパレル産業の環境問題にフォーカスし、スローファッションの普及を目指す学生団体「あらとぅ」。
撮影:kagari
飲食店を通じた子どもの食支援・フードリボンプロジェクトを行う「ロングスプーン協会」。
撮影:kagari
経済的な困難を抱える子どもたちをリアル・オンライン両面から支援する団体「チョイふる」。
撮影:kagari
ミャンマー人のクリエイター支援のためのプラットフォームを展開する「ドキュ・アッタン」。
撮影:kagari
スライドや映像を用いながら、各々が取り組む課題や活動について真剣なまなざしで語る登壇者たち。
プレゼンが始まる前は、思い思いにお酒を酌み交わしながら談笑していた参加者たちの注目が一点に注がれた。
知られざる事実に驚きの声を上げる人や、直接質問を投げかける人も。来場者はみんな社会課題に取り組む団体の声に真摯に耳を傾けていた。
登壇者の一人、ドキュ・アッタンの久保田徹さんに話を聞いてみた。
「これまで、ミャンマーのことや人権問題などに関心がなかった方にも届ける機会をいただけて大変ありがたかったです。
また、他の登壇者の方から勉強会などに誘っていただくなど、素敵なつながりが生まれました」(ドキュ・アッタン 久保田徹さん)
KIFUBARは「お酒を飲みに行こう!」と気軽に参加できるイベントだった
夜が深まるとともに参加者も続々と集まり、最終的には26名が参加した。
撮影:kagari
店内では、初見同士であっても登壇団体について語り合うなどカジュアルに打ち解け合っている様子が多く見られた。
また、一人でふらっと飲みに行く感覚で初めて参加する人も多い印象だった。
参加者の女性は、「登壇団体の話を聞きたくて初めて参加しましたが、他の参加者とお酒を飲みながら交流できるスタイルが新鮮でした。仕事終わりに気軽に参加できて、みんなにとってWin-Winになるところが良いなと思いました」と話していた。
また、参加者同士はもちろんのこと、登壇者も輪に加わり対話を楽しめることも大きな特徴だ。
「KIFUBARを知って少しでも気になった方は、ぜひ実際に足を運んでいただきたいです。
なぜなら、情報だけではリアルの会場で実際に感じる熱量を伝えきることができないから。その魅力をあなたの目で確かめてください」(発起人・谷田さん)
登壇者も参加者も、社会をよりよくしていきたい仲間同士としてカジュアルにお酒を酌み交わしながら、フラットに語り合う。気がつくと「寄付を募る側」と「寄付をする側」の境界線が溶けていく夜だった。
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