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ピルを飲むのをやめる女性が急増中! 一体なぜ? - Women’s Health Japan

「10年間で6つのオプションを使ってきました」と話すエリンは、経口避妊薬からミニピル、避妊リングまで、さまざまな避妊法を試してきた多くの女性の一人。19歳からピルを飲み始め、最初の5年間は問題なく過ごせていたが、それから徐々に気分が優れなくなっていったそう。

31歳になり、抜け毛の原因がピルにあると判断した彼女は、避妊リングへ切り替えることにした。その後見つけた他のピルも暫く効果はあったけれど、やはり気分に影響が出始めた。その間に、SNSでピルをやめる決断を絶賛する女性たちの発信を頻繁に目にするようになったという。当時のエリンにとってはリスクの高過ぎる決断にも思えたが、未来の計画や現在抱えている問題について婚約者と医師とよく話し合った結果、彼女もピルをやめる決断をすることになった。

イライラする症状や、次になにを試そうかと悩む必要がなくなり、「ピルをやめて気分がずっとよくなりました」とエリンは言う。「ですが、私がピルをやめられたのは半年以内に妊娠を望んでいるからです。妊娠しても大丈夫でない限り、誰もがやめるべきではありません」

近年、避妊薬(とくにピルなど、非常に効果的なホルモン剤による避妊法)の評判の危機に陥っている。TikTok、Reddit、YouTubeなど、あらゆるSNS上でリスクとメリットにおける誤情報が拡散されており、医師たちによれば、ピルに関する根拠のない懸念を持つ患者の外来が増えているという。「長い間避妊薬を使用していることを突如心配して診察に訪れる女性が増えています。ネット上で見た情報をスクリーンショットして持参する女性もいるほどです」と話すのは、マンハッタンを拠点とする産婦人科医のモリー・マクブライド医学博士。

こんなとき、エリンのような女性たちが板挟みになる。ホルモン避妊薬には副作用が伴う場合があり、すべての人に合うものではない。でも、信頼できる効果の高い避妊薬が欠かせない時期もあり、それに関して正しい情報を得る必要がある。「アルゴリズムが提供する情報には注意を払うべきです」とエリン。

複雑な問題は抜きにせよ、自分に合った避妊法を見つけるのは結構むずかしい。ピルやリング、非ホルモン性のものまで、選択肢が豊富にあるから。「最終的に決めるのは、あなたとあなたの体です」と話すのは、マウントサイナイ医科大学で産婦人科および生殖科学の臨床助教授を務めるスザンヌ・フェンスキー医学博士。「ですが、確かな情報をもとに賢く選択したいものです」

あなたが賢明な決断をできるように、まずは避妊薬について事実とフィクションを区別していこう。

ピルを使う(または継続する)ことは自分にとって正しい決断?

birth control pills blister pack
Peter Dazeley//Getty Images

ピルは現在もっとも使われている避妊法で、いかなる避妊法を使用するアメリカ人女性の25%がピルを選択しているが、最近のデータによると、2002年以降からピルの使用率は徐々に減少傾向にある。その理由は定かではないが、一部のピルのユーザーは、何年もの間ピルを飲み続けた後で突然気分が悪くなることがあると報告している。定期的に薬物を摂取しなければ、心と体がどのような状態でいられるのか興味を持ち始める人もいれば、長期的に薬物を使用することによる体への影響について懸念を抱く人も増えている(実際に長期間ピルを使用してきた一部の人は、ウェブフォーラムやポッドキャストでピルをやめたあとのポジティブな感想を共有している。「頭がスッキリするようになった」「以前より幸せ」「世界がより鮮やかに見える」など)

フェンスキー医学博士によると、多くの医師が、ピルの副作用による気分の変化やブレインフォグなどの患者の訴えを軽視してきたとのこと。その主な理由は、実際にピルがもたらす副作用がどれほど一般的で、どんな人が副作用の影響を受けやすいかなどに関する確実な研究が存在しなかったからだという。これに加え、妊娠を防ぎ、ひどい生理痛を治療できるピルの能力が、少なくとも医師の観点からは、患者の懸念を大幅に上回っていたからとのこと。「この国(アメリカ)では、長い間疑問を抱くことなく誰もが混合型のホルモン避妊薬を処方される傾向にありました」とフェンスキー医学博士。今では、若い女性たちがそれに抵抗し、多くの疑問を投げかけているのを目の当たりにしていると話している。

基本的に、多くの女性が懸念していることと医師や研究者たちが実際の問題と捉えていることの間にはズレがある。ピルは一般的に安全な薬ではあるが、必ずしも快適なものではない。とくに敏感な女性にとって副作用は真の問題となるけれど、だからといって必ずしも「ピルが危険」だとか、「副作用がきついからピルをやめるよう検討するべき」だということにはならない。ピルの効果に実際に満足している人でさえ、さまざまな理由でピルをやめる人たちの意見に影響を受け、ピルについて懸念し始めていると医師たちは話している。

ピルを飲んでいる人の大多数は、副作用に忍容性があり、妊娠しないという利点と生理痛の激しい痛みやニキビが改善できることにメリットを感じている。「最近のピルは非常に低用量です。私生活を向上させ、避妊法として優れた手段であることは確かです」とマクブライド医学博士。

さらに安心できる点は、特定の種類やメーカーの避妊薬が合わなければ、「別のものや異なる世代のものに選び直すことができます」とフェンスキー医学博士。単に毎日ピルを飲みたくなければ? 「常に効果的な新しい避妊法が登場しています」。例えば、避妊リングやインプラントなどの長期のプロテクション、あるいは2020年にFDAの認可を受けた、性交渉をする前に膣に塗布する避妊ジェル「Phexxi」のような新しい非ホルモン性の選択肢について医師に相談することもできる。

選択するうえでもっとも重要なのは、あなたが選ぶ避妊のオプションについて、信頼できる医師に詳しく説明してもらうこと。「あなたに合う避妊法は、あなたにとって独自なものであり個人的なものなのです」とフィールズ医学博士。

チェック事項:周りの友人たちが全員ピルをやめ始めているにせよ、すぐに決断を出す前に、ノートや健康アプリ、生理日追跡アプリなどを利用して、少なくとも1周期分の症状を記録しておくこと。そのデータをもとに、自分に適した選択肢について医師としっかり話し合って決めていこう。

ホルモン避妊薬が自分に合っているのかどうかを知るには?

choosing the right pregnancy prevention method
JLco - Julia Amaral//Getty Images

#FYP(あなたのためのページ)をスクロールすれば、ホルモン避妊薬に関する意見を拡散しているウェルネスインフルエンサーを少なくとも一人は目にするだろう。そしておそらくそれは、肯定的な意見ではないはず。ネット上では、ホルモン避妊薬(ピル、IUD、インプラントなど)は体に「不自然」であり健康に害がある、不妊などの問題のリスクが増加するなどと言われているが、これらは誤解を招くものであり、事実ではないという。

詳しく掘り下げていこう。まず「自然」という言葉に対して批判的であるべきだと話すのは、バーチャル避妊薬スタートアップ「Pandia Health」の共同設立者であるソフィア・イェン医学博士。彼女に言わせれば、現代の私たちほど出血すること自体が「自然」ではないという。私たちの先祖は、現代の私たちがキャリアを築いたり、20代を謳歌している時間のほとんどを妊娠したり授乳したりして過ごしていた。「現代の女性は生涯で250〜400回の生理を経験します。ですが昔は、100回程度の生理を経験することが『自然』だとされていたのですから」とイェン医学博士。

ピルをやめるなら想定しておくべきこと

sad unhappy face of pink pills on white background tablets of drug for asthma treatment
toons17//Getty Images

ホルモン避妊薬の使用をやめる理由は人によってさまざま。だからこそ、あなたはあなたらしい決断をするべき。そのためにまず知っておくべきことは?

▶︎ピル、リング、パッチ

ピル、リング、パッチはいつでも(途中でも)中止することができる。医学的な観点から見ても、いつ中断するにせよ、次にいつ生理がくるかわからない点を除いては、体に害はない。したがって、副作用がそこまでひどくない場合は、現在のサイクルをひとまず終えてからやめることを検討してみるといいかもしれない。

▶︎避妊リング(IUD)、またはインプラント

どんな理由であれ、IUDをいつ取り外しても問題はないが、自分で取り外すことだけはしないように。産婦人科で予約をとり、医者は検査を行い、IUDのストリングを引いて抜き取ってくれる。その際に、医師は特別な器具を使う場合もある。取り出した後は、けいれんや軽い出血を起こすことがある。インプラントを除去する場合は、医師は局所麻酔を行い、数ミリ程度の切開をしてインプラントを取り外す。その後、最長で2週間は痛みを感じるかもしれない。

▶︎再び妊娠が可能になるとき

ホルモン避妊薬をやめるとすぐに妊娠が可能になり、自然なホルモンのサイクルが再び戻ってくる。「クレンジングなどを行う理由はありません」とマクブライド博士。ただし、一部の女性は生理が戻り、規則的に生理が来るようになるまで1〜2ヶ月かかることがある。現時点で周期のどの段階にいるのか、いつ妊娠が可能になるのかを正確に知る方法はないので、非ホルモン剤のジェルやコンドームなど、FDAが承認した別の選択肢に切り替え、妊娠を防ぐための予防策を講じるようにしよう。

生理が来る頻度が増えることは悪いことではないが、それがピルの副作用と同じくらい生活に支障をきたす可能性があることも理解しておく必要がある。「避妊以外の理由でピルを服用する人が70%にも昇ることを知っておいてください。その主な理由は、生理痛の痛みや重さを和らげるためです」とマクブライド医学博士。

今年『Health Communication』誌に掲載された研究では、Youtubeの人気動画50本が分析され、そのうちの74%がホルモン避妊薬をやめることについて語られているが、すべての動画には避妊薬に関する誤解を招く情報が含まれていたり、情報の欠落がみられたという。「ネット上の誤った情報により、ピルに満足している女性まで自分が下した選択を疑い始めています」 とマクブライド博士。

参考までに、どのタイプのホルモン避妊薬であれ、妊娠能力に影響を及ぼすという証拠はないとのこと。実際にピルを服用している多くの女性は、妊娠能力に影響することで知られる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の症状を管理する理由としてもピルを使用している。「問題はピルのように思えるかもしれませんが、実際に問題を引き起こしているのはPCOSです」とマクブライド博士。

チェック事項:理想の避妊法をイメージし、あなたが望むことをリストにしてみよう。例えば、「生理の痛みを軽減したい」「毎日ピルを飲むことについて考えたくない」など。そのリストを医師に見せて、あなたに最適な選択肢を選ぶようにしよう。

自然家族計画法(NFP)が最適かどうかを判断するには?

menstrual control
Isabel Pavia//Getty Images

結局のところ、ホルモン避妊薬が合わないと感じる女性はいる。18歳以上の女性に効果的な避妊法として、2018年にFDAが認可した生理追跡アプリ「Natural Cycles」は、2022年から2023年にかけて70%の売上増加を記録した。最終的にはエリンもこの方法をとっている。「自分で生理周期を管理するリスクを受け入れる覚悟ができていました」とエリン。この手段をとるのであれば、エリンと同じ心構えを持つ必要があると専門家は強調する。

IUDやピルを用いる避妊法と比較して、生理周期を自分で追跡することは避妊の効果の面で劣ることは間違いない(避妊薬を使用しない場合、通常1年以内に妊娠する確率は平均85%。NFPの場合は25%、コンドームを使うと13%、ピル、パッチ、またはリングを使うと7%に下がり、IUDやインプラントを使う場合は1%未満となる)。「これらの確率で問題がなければ、生理周期の追跡管理や体外射精、コンドームの使用はよい選択肢となります」とイェン医学博士。

チェック事項:もし今日妊娠したら、自分にとってそれがどれほど素晴らしいことか、またはそうでないかを考えてみよう。どんな避妊法であれ失敗する可能性はあるため、この思考訓練はあなたがどの程度のリスクを受け入れることができているか、そして避妊効果の重要性が自分にとってどれほど大切かどうかを改めて認識しなおすために役に立つ。
 
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: AMELIA HARNISH Translation : Yukie Kawabata

Headshot of 川畑 幸絵

翻訳者

短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。

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