システム開発を生業にする傍ら、3Dプリンターを駆使したプロダクトデザインを手掛けるベンチャー企業として2021年7月に創業した株式会社カタパルト。
プロダクトデザイン部門のいちプロジェクトとして、他に類を見ないまったく新しい機能を備えた指カバー「フィンガーシェル」の開発をスタートしました。
このストーリーでは「フィンガーシェル」がどのような経緯で発想され、どのような段階を踏んで現在の形態になったのか、その開発ストーリーを開発者の経験談をもとにお届けします。
指先のベトつきとニオイを何とかして、快適にフライドチキンを食べたい
それはある日、自宅の夕食時にフライドチキンを食べている時のことでした。
フライドチキンとビール、これ以上にない最高の組み合わせですよね!
フライドチキンを手に取ってひとかじり。すかさず冷えたビールを飲むためグラスに手を向けたところ、手が止まりました。
そう、お分かりだと思いますが、フライドチキンの油が指先に付着していて、素手でグラスに触ることに少なからず抵抗感がありました。ですから当然のようにグラスを触る前にティッシュで指先を拭いて、グラスが汚れる心配がなくなってからビールを飲むようにしていました。
うまい!ビールとフライドチキンの相性最高!と喜んでいたのも最初だけ。
何度もティッシュで指先を拭くことが面倒になってきて、また拭いたくらいでは指先に付いた油のニオイが消えません。だんだんニオイにも不快感が現れ、フライドチキンを食べた後は即座に洗面所に行って指先を水洗いし、戻ってきてビールを飲むという行為を繰り返しました。
水洗いすることで、指先のベトつきとニオイはほぼ完全に消えますが、食事中に席を立ったり座ったりする行為は落ち着きがなく、家族も迷惑そうでした。
この瞬間から、もっと快適にフライドチキンを食べる方法はないものか?と考えるようになり、その手段としてフィンガーシェルの開発がスタートしました。
フライドチキンの油で指先はベトベト
3Dプリンターで試作を開始。使いやすく、脱落を防ぐ機構の実現に苦戦
初期の段階で発想したのは、指の径よりひとまわり大きいサイズのリングを作り、そのリングに指サック型の袋状の薄膜を取り付けて指カバーを形成し、その指カバーを指に装着するというものでした。リングのサイズをひとまわり大きくするのは、指への着脱をスムーズに行えるようにするためです。
指カバーは、親指、人差し指、中指の3本に装着する作戦です。経験上、フライドチキンは薬指と小指を使わなくても困らずに食べることができるからです。
リング部分は3Dプリンターで製造し、袋状の薄膜は市販のポリエチレン製の使い捨て手袋の指先をカットして指袋として流用しました。
写真のように、リングにポリエチレン製の指袋を取り付けて、開口部がソリッドな素材で出来た指サックのような指カバーができました。
しかし機能的な欠点として、この指カバーのリング径は指径よりもひとまわり大きいため、指に装着しても指先を下に向けると簡単に指カバーが脱落してしまうことでした。
そこで、個々のリングを柔軟な素材で出来たベルトのようなもので連結し、脱落を防ぐようにしました。ですが、連結することで各指を動かすときの自由度がなくなり、お世辞にも使い勝手が良いとは言えないものになってしまいました。
こういった経緯から、次期バージョンの開発では、リングを連結させずに脱落を防ぐ機構をどのように実現すべきかが課題となりました。
フィンガーシェル試作品(バージョン1)
「サポートアーム」を考案し脱落を防止。コスト増加を防ぐシンプルさを追及する必要性
脱落を防ぐ手段として、後に「サポートアーム」と呼ばれる機構を考案しました。
サポートアームは、その先端部に磁石が内蔵され、指カバーが指に装着されているときは指の甲を適度な力で押圧します。その効果で、指から指カバーが脱落するのを防止でき、ベルトによる連結を必要とせずに各指を独立させることに成功しました。
また、指から指カバーを取り外すときは、磁石の磁力を利用してサポートアームの押圧を解除し、さらに磁石の吸着力を利用して取り外した指カバーを静止させることができました。
サポートアームを採用することで、指から指カバーが脱落することを防ぎ、かつ各指の指カバーを独立させることができ、かつ取り外した指カバーを静止させることができる、という一石三鳥の機能を実現することができました。
しかし、このバージョンにも2つの課題がありました。
1つ目は、サポートアームを開閉させるためにヒンジ機構が必要となり構造が複雑になってしまうこと、2つ目は、指への押圧は外力が必要となり、その外力としてゴムやバネの部品が必要になることでした。
構造の複雑化と部品点数の増加は、製造コストにもダイレクトに影響するので悩ましい問題です。そのため、よりシンプルな構造と部品での製造を目指し、次期バージョンの開発を始めました。
フィンガーシェル試作品(バージョン2)
食べられる指カバー型のパン「ゆびぱん」の開発スタート
若干話が逸れますが、この時期に「ゆびぱん」という食べられる指カバー型のパンの開発にも着手していました。
ゆびぱんを指に装着してフライドチキンやローストチキンを食べることで、手づかみで食べても指が汚れず、最後はゆびぱんも一緒に食べられるという今までにない機能性パンです。
ゆびぱんの現状や詳細については割愛しますが、今のところまだまだ満足のいく完成度にはなっていません。時間を見つけて少しずつ開発を進め、将来的に皆様にご提供したいと考えています。
また、ゆびぱんは食品ということもあり、弊社単独の開発では心もとない面がございます。ゆびぱんにご興味があり、食品やパンにお詳しい方がおられましたら是非ご連絡をくださいますと幸いです。共同開発についてご提案したく考えております。
開発中の「ゆびぱん」
シンプルさを追求し、ダンボールによる板バネを考案
よりシンプルな構造と部品での製造を目指し、バージョン3の開発を開始しました。
シンプルな構造と部品ということは、製造工程が単純で、製造原価が安価ということになります。
本バージョンでは、サポートアームにダンボールを用いることで圧倒的な部品コストの削減となり、製造原価を抑えることに成功しました。また、ダンボールを折り曲げることで、元に戻ろうとする反発力が指への押圧に利用できます。この反発力のおかげで、部品コストが発生するゴムやバネのような外力に頼らずにサポートアームの機能が実現できました。さらに、着脱の手段として指カバーの上面に粘着テープを貼り付け、その粘着力を利用して指から指カバーを外しているときに、指カバーを平面や側面に静止させる機能を実現しました。
本バージョンは、ダンボール、粘着テープ、ポリエチレンの指袋、の3つの部品からなり、どれも調達コストが圧倒的に安価なため使い捨てとしての用途が可能になります。
使い捨てはいつでも新品が使えるので清潔に利用できるメリットがあります。
本バージョンについては量産体制を整えて販路を見出したいのですが、現在弊社ではそのノウハウを持ち合わせていません。ご興味がある方、またはサポートいただける方がおられましたら是非お声がけいただけますと幸いです。共同での量産化と販売についてご提案したく考えております。
フィンガーシェル試作品(バージョン3)
サポートアームを機能させるために最適な、クリアファイルの柔軟性を活用した「フィンガーシェル」誕生
バージョン3は量産体制に課題があったため一旦ペンディングとし、自社独自で製造販売を行えるプロダクトを目指してバージョン4の開発をスタートしました。
バージョン4では、バージョン3と同等かそれ以上に安価な部品と製造工程の単純化を目指していましたが、次の発想がなかなか浮かばず開発が難航していました。
そんな中、ふと目に留まったクリアファイルがターニングポイントとなりました。クリアファイルの柔軟性に着目し、形状を扇形にカットして指の甲に巻きつけるように取り付けてみたところ、予想以上のフィット感があったのです。
さらには、クリアファイルの素材であるポリプロピレンが持つ独自のヒンジ特性(弾性力)がサポートアームを機能させるために最適であることが分かりました。その結果、現在の形状と機能を備えたプロダクトとなり、本バージョンを「フィンガーシェル」と名付け、製造と販売を開始することになりました。
本バージョンの特徴は以下となります。
- 本体はポリプロピレン製で入手と加工がしやすく安価
- サポートアームはポリプロピレンのヒンジ特性を利用し外力不要で動作可能
- 留め具によりポリエチレン製の指袋のみ交換でき安価で清潔に使用可能
フィンガーシェル試作品(バージョン4)
少しでも多くの方にご使用していただきたいという想いで、オンラインショップを立ち上げ販売開始
オンラインショップを立ち上げ、フィンガーシェルの販売を開始しました。
しかし、売れ行きはまだまだです。
もっとたくさんの方に認知していただき、少しでも多くの方にフィンガーシェルを使用していただきたいと思っています。
フィンガーシェルを必要とする方のシェアはニッチだと考えられますがここでしか入手できない製品です。ご興味がある方は是非手にとって使用感をご確認いただけますと幸いです。
販売中のフィンガーシェル:3フィンガーセット(指袋300枚+専用ケース付き)
専用ケースに吸着しているフィンガーシェル
フィンガーシェルとフライドチキン
フィンガーシェルの機能と使用方法について、詳しくは以下をご参照ください。
- フィンガーシェル公式サイト
フィンガーシェルのオンラインショップは以下よりアクセスしてください。
- フィンガーシェルSHOP
食べ放題店には相性の良い「フィンガーシェル」
手羽先やフライドチキンをメイン食材にしている飲食店の運営者の方で、フィンガーシェルを導入してみたい方はいらっしゃいませんでしょうか?
店舗のオーナー様や関係者の方でご興味のある方がおられましたら是非お声がけください。弊社で全面的に協力させていただきます。
特に食べ放題店様には相性が良いと考えております。
手のベタベタを気にせずに、フライドチキンが食べ放題な専門店を作りたい
今後の目標は、世界初の飲食店の構想として、フィンガーシェルを使った手羽先やフライドチキンの食べ放題の専門店を作ってみたいです。
大皿に盛られた山盛りの手羽先やフライドチキンがあり、お客様全員がフィンガーシェルを装着して思う存分に骨付き肉を手づかみで食べられるお店です。
手づかみで快適に骨付き肉が食べられ、かつキレイな指でグラスを持ってドリンクが飲め、かつキレイな手で箸やフォークを持って他のメニューも食べられる、そんなお店を作りたいです。
知的所有権について
フィンガーシェル
- PCT国際特許出願
ゆびぱん
- 商標登録 第6503112号
- 意匠登録 第1722174号
- 国際意匠(ハーグ意匠)出願
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