『町中華で飲ろうぜ』の玉さんと町中華談議をしたい!
こんにちは、町中華探検隊のライター、半澤と申します。
『メシ通』で町中華についての取材は久々で、ワクワクしますね。以前はこんな記事も書かせていただきました。
町中華がちょっとしたブームとなって、ずいぶんたちます。この言葉が一般的になったということを、年々痛感していますね。
特にテレビの影響はあまりに絶大。情報番組でのプチ特集や、バラエティ番組でおいしいお店ランキングが放送されることもしばしば。
とはいえ、町中華を取り上げ、ここまで注目を高めたのは、お笑いタレントの玉袋筋太郎さん(浅草キッド)が出演するテレビ番組『町中華で飲ろうぜ』(BS-TBS)の影響も相当なものではないでしょうか。
僕もこの番組を見られるときはなるべくチェック、各地の町中華を食べる玉さんの勇姿に感動しておりました。
というわけで、ぜひともあの玉さんと町中華談議をしたい! まずは町中華で飲(や)る(=飲む)とは何かを、町中華を巡り飲りまくっている玉さんに伺います。
玉さん推薦店、阿佐ヶ谷の老舗「開々亭」で集合
玉さんと待ち合わせたのは東京・阿佐ヶ谷の町中華「開々亭」さん。2023年で52年目を迎える渋いこの名店は、『町中華で飲ろうぜ』でも登場したお店。
僕も個人的に何度か訪れ、店内にかかる演歌をさかなに飲ってましたが、はたして今日はどんなお話を聞かせていただけるのか。
手慣れた感じでお店に入ってきた玉さん。席に着くなりバッグから「マイおしぼり」を取り出します。もう登場シーンからカッコ良過ぎです!
玉袋筋太郎(以下、玉さん):オレくらいになると「マイおしぼり」をいつも持っているからね。はっきり言ってやり過ぎてる、もう、間違いだよね。本当はそこまでやる必要はないんだけど、今日は「スナック玉ちゃん(※)」から借りてきたよ。
(※)玉袋氏が経営するスナック。同名のイベントも開催
「6・3・3(ろく・さん・さん)」は、大人の義務教育
──いやあ、いきなりマイおしぼり持参とは驚きました。早速なのですが、今回は「町中華での正しい飲り方、正しい飲み方」についてお話を聞かせてください。
玉さん:まあまあ、焦らずにとりあえず乾杯しようよ。今日は車じゃないんでしょ。ほら、共犯だよ共犯!
──(乾杯しながら)今日はたくさんお話を聞かせてください! よろしくお願いします。やはり町中華に来たらいきなりラーメンやチャーハンからでなく、まずはお酒とおつまみを注文されるんですか?
玉さん:オレはいきなり飲っちゃう方かな。おなかがハングリーな状態で、食わないと死ぬのか、飲まないと死ぬのかの二択で判断してね。若いときはいつも「食わないと死ぬ」って状況だったけど、もう50過ぎたからさ。心の余裕が出てきて、やっぱりまずは飲もうかってなるね。
──最初に注文されるものは何でしょう?
玉さん:そりゃあ瓶ビール、大瓶だよ。「6・3・3(ろく・さん・さん)は大人の義務教育」っていうのは『町中華で飲ろうぜ』でも言ってきたからね。
──番組を見てその表現を知りましたが、本当にそれ名言ですよね。
▲「6・3・3は大人の義務教育」という言葉は、番組で東京・高円寺の町中華を訪れ、大瓶を注文したときに飛び出した名言。この日も「大人の義務教育」であるビールの大瓶からスタートした
玉さん:あれは偶然出た言葉で。大瓶(633ml)が出たときに、6年・3年・3年で小学校、中学校、高校ってことね。まあ、もちろん高校は義務教育じゃないんだけど、もうビールの大瓶は大人の義務教育ってことでいいんじゃないかってね。
──生ビールじゃなくて、瓶ビールなんですね。
玉さん:町中華に限らずだけどさ、生ビールは味がブレるから、オレは瓶ビール派なんだよ。やっぱり最初は瓶ビール。その後にオレは焼酎にいくね。
そこに町中華があるから飲む。だから「通(つう)」かどうかなんてない
──ずばり、伺いたいんですが、町中華で「飲む」ときに、なにか通っぽいやり方はありますかね?
玉さん:いい質問なんだけどさ。正直、オレは通なんてないと思ってる。そもそも、こういう所で飲むのに、わざわざ予定を立てるみたいなのがイヤなんだ。そこにあったから、そこに町中華があったから行ってみようかな、なんだよね。
思い返すと、オレの人生、半径1km以内にいつも町中華があるっていう状態で生きてきたのよ。今みたいにブームになっていることはうれしいけど、ちょっと考えることもあるよね。
▲もともと番組が始まる前からお気に入りの町中華が何軒かあったそう。「そこに町中華があるから行く」。このスタンスでずっと飲ってきた
玉さん:町中華のイスに座っちゃってドーンとしてさ、なんとなく「人生、もうこれでいいんじゃね」って感じられたらいいよね。スナックもずっとそうだけど(※)、だから自分の生き方の裏テーマとしてやってきたのかな。収録のときでも普通にベロベロになるしね。
(※)玉袋氏は生粋の「スナック愛好家」としても知られ、スナックを題材にした番組『玉袋筋太郎のナイトスナッカーズ』(BSイレブン)への出演や、イベント「スナック玉ちゃん」を開催するなど、スナック文化の啓蒙活動を行っている
──スナックでも町中華でも、玉さんはそういう境地を追い求めているんですね。
玉さん:でも、敵はデカいよ。だって、(スナックや町中華は)日本全国にあるんだもん。でも最後に「(これ以上は)もういいよ、これでいいんじゃね」みたいに思える場所に出会いたいよなあ。それが人間のあるべき姿。なんて、偉そうに言っちゃったけど(笑)。
▲玉さんは「全日本スナック連盟」の会長でもある。「これでいいんじゃね」と感じられる場所を愛してやまない人生が、そのまま仕事にも直結している
──玉さんにとって町中華とは「もうこれでいいんじゃね」と素直に思える場所なんですね。
玉さん:だからさ、通の飲み方なんてないし、通だと思う必要もない。今、メディアで町中華も注目されてきてるから、どうしても「そっちの店の方が通じゃん」みたいな雰囲気になっちゃうけど、それはちょっとイヤだなあ。まあ、もうちょっとつまみ食いながら、ゆっくり飲ろうぜ。ママ、チャーシューお願いします。
町中華で飲む。そのスタイルはみんな違ってみんないい
▲チャーシューに一味唐辛子をかける玉さん。チャーシュー、メンマで最初の一杯を楽しむというのはまさに町中華飲みの王道。そして到達点でもある
──人によって町中華での飲み方は全然違いますよね。
玉さん:今はなくなっちゃったけど、東京・中野の鍋横商店街にいつも通っていた名店の町中華があったんだけどね。オレも二十数年通ってて、そろそろ「黒帯」になったかなって思っていたわけよ。その店には、いつも昼のラッシュが終わるくらいの時間に入って、チャーシュー、メンマで飲んで、シメで野菜つけそばを食うってのをやってたんだよ。
──ラッシュの時間を避けて行くというのがすてきですね。
玉さん:そこがさ、店を閉めるということになって。最終週に行ってみたら、オレより長く通い続けた手だれの黒帯たちがいるわけ。オレの横に座っていた人はオレと同じ注文で、チャーシューにメンマでビール。
その奥にもう一人いて、その人は一発目から熱かんで飲ってて、その人だけチャーシュー、メンマになぜか味玉が入っていたんだ。これはどういうことなんだと店の大将に聞いたら、一言、「この人、古いから」って。
──ものスゴい説得力。
玉さん:その一言を聞いてもうさ、黒帯から茶帯に落ちた気持ちだったね。その店で最後に野菜つけそばを食べて、ありがとうございましたって言って、横にいたビールの人と外でタバコを吸ってたら、さっきの「熱かんの黒帯」が出てきた。
なんとその人、熱かんとつまみだけで、つけそばなんて食わないで出てきたわけ。これはまあ一つの物語としてね、覚えておきたいよね。横のおじさんと「オレたち、まだまだだな。かなわねえな」ってなった。
──なるほど、その熱かんの方にとっては、そのお店はまさに「飲る」場所だったわけですね。そんなふうに自分の道を追求するというのも、町中華飲みの魅力と言えるのでは?
玉さん:ただ、住んでいる場所ってのがあるわけだからね。まずは住んでいる家の近くでそういう店を見つけるってのが一番楽しいと思う。エアポケットであり、エイドステーション。ここがオレの本当の三ツ星! 毎日のローテーションとして、近所でウロウロ探さずにふっと入ることのできる「マイ三ツ星店」を、やっぱり見つけておいた方がいいんじゃないかな。
▲まさに三ツ星級の開々亭のチャーシュー(500円)。ビールに合いまくる濃い味で、酒が進む、進む! 一味唐辛子、辛子と一緒にいただく
町中華には「大型特殊二種免許みたいな店」がある
──最近は若い女性も町中華に行くようになったりと、以前より町中華は身近な存在になった気もします。
玉さん:オレたちは普通に飲ってるだけなんだけどね。町中華は減少傾向ではあるものの、もともと間口が広い場所でもある。例えば、東京・新宿の岐阜屋で食うのが「エモい」みたいになってるんでしょ。
──岐阜屋さんは場所もスゴい所にありますし、本当に名店ですよね。僕は30歳を超えてもなかなか、一人で入れなかったですもん。
玉さん:あれはもう、大型特殊二種免許が必要だな(笑)。でも、あの店に行けたら、どんな所でも操縦できる。そういう「大型特殊二種免許みたいな店」が町中華には多いんだよね。なんなら戦車だって運転できるぜっていうね。でも、この免許制度、取得は意外とラクだってことは言っておきたいね。
町中華で飲む。それはつまり「許してもらう」ってこと
──話は戻りますが、玉さんにとって町中華とは「もうこれでいいんじゃね」が可能な場所であり、スナックもそうだったってことですね。
玉さん:そうかもしれない。「許される場所」ってことね。みんな、そこに気付いてよというメッセージを出しているのかな。こういう生き方もあるんだって思える人は、オレたちに乗っかってきてくれるしね。
──確かに、町中華で飲むというのは「許してもらう」ってことなのかもしれないですね。
玉さん:そういうことを考えながらも、なおかつさっき言った、お昼時とかの繁忙時間には店に入らないとかね。そういうところを考えたいよね。こういう店がなくなったら、世の中面白くなくなっちゃうよ。
──ここ最近、どんどん町中華が少なくなっているのを感じます。
玉さん:例えば「後継ぎいない問題」とかね、どうしてもこういう個人店は、いつかなくなっていくんだよ。でも、ここがある日ふっとなくなったら、ここを愛していた人はどこに行けばいいんだって話。
──ゆっくり飲めて、「もうこれでいいんじゃね」の受け皿になってくれるようなお店なんて、そうそうない。
玉さん:そう、そうね……ないと思うよ。うーん。この店(開々亭)だって、なんつったって最高じゃない。取材だってのに、演歌が大音量で流れ続けている。これがこの店の「当然」なんだよ!
▲「許される場所」でありながら、「郷に入っては郷に従え」が大事。演歌が流れていたら、ひたすら演歌に心を預けるほかない。これぞ町中華の味わい方
玉さん:オレは全部、このスタンス。「これでいいんじゃない」って感じ。そんなのダメですか? うん、 ダメだと思いますよ。まあ、もうちょっと飲もうぜ、頼もうぜ。
と、まだまだ飲り足りない玉さん! 次回は「本当に最高な町中華の見分け方」を伺います。
撮影:平山訓生
お店情報
開々亭
住所:東京都杉並区阿佐谷南2-12-1 丸伊マンション1F
電話番号:03-3315-1501
営業時間:11:00~14:00、17:30~22:30
定休日:日曜日
※営業状況は変更になる場合がありますので、店舗にご確認ください。
DVDリリース情報
書いた人:半澤則吉
1983年福島県生まれ。2003年大学入学を期に上京。以来14年に渡りながく一人暮らしを続けている。そのため自炊も好きで、会社員時代はお弁当を作り出勤していた。2013年よりフリーライターとして独立。『散歩の達人』(交通新聞社)にて「町中華探検隊がゆく!」を連載するなどグルメ取材も多い。朝ドラが好き。
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