Vol.4 気がつく男
仕事のアポを終えた正午。
広尾の交差点で、秘書の星野が鼻をひくつかせた。
「うわ、めちゃくちゃいい匂いする。ねえねえ社長、お昼に白トリュフ塩パン買ってきます?トリュフ以外にも、社長の好きなシナモンロールとかパンオショコラとかもありますよ」
星野の目を釘付けにしているのは、『トリュフベーカリー』だ。店頭には香ばしいパンがずらりと並び、由里香の食欲を刺激した。
けれど、由里香はどうにか誘惑を振り切る。
「今日はちょっと…遠慮しとく。それより、なんか気づいたことない?」
そう言ってくるりと回って見せる由里香を、星野はまじまじと見つめ小首を傾げる。
「…?あ、もしかして…。その服、2日目ですか?」
「そんなわけないでしょ!あのね、私、先週から1キロ痩せたの。ダイエット中だから、高カロリーなものは控えてるのよ」
「…もしかしてまた、婚活アプリで新しい人と出会いました?」
たいした興味もなさそうにそう聞きながら、星野はいつのまにか『トリュフベーカリー』の列に並んでいる。
その横で由里香はうっとりとしながら、今夢中になっている婚活相手について語り出すのだった。
「違うの星野くん。今度はアプリじゃなくて、友達からの紹介なの。私、ほんとに近いうちに結婚しちゃうかも〜!」
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