<ミッションの合間のリラックスタイムにも、宇宙空間ならではのひと工夫が必要だ>
国際宇宙ステーション(ISS)での生活には、ちょっとした動作にも創意工夫が宿っているようだ。
欧州宇宙機関所属(ESA)のイタリア人宇宙飛行士であるサマンサ・クリストフォレッティさんが、ISSでのコーヒーの楽しみ方を動画で紹介している。彼女がTwitterに投稿した動画によると、専用のカップがなければコーヒーを嗜みづらいのだという。
動画のなかでクリストフォレッティさんは微笑みながら、パウチ容器に入った液体のコーヒーを持っている。ゼリー飲料のようなチューブ付きの容器となっているため、容器を握ればそのままチューブに口をつけて飲むこともできそうだ。
しかし、ここはやはりカップに移し、地上と同じようにコーヒーの香りを存分に楽しみたいところ。クリストフォレッティさんは「カップを使えるかな?」と思い立ち、「やってみよう!」とチャレンジする。
地上と同じようにやってみると......
彼女は小さなビンをカップとして使い、パウチ容器からゆっくりとコーヒーを移してゆく。飛び散ってしまうかと思いきや、カップのなかで塊となって張り付いている。
液体には表面張力が働いており、なるべく表面積が少ない形状、すなわち球状になろうとする性質がある。そのため慎重に注ぐ限り、四方に飛び散るようなことにはならないようだ。
ところがいざ飲もうとすると、この性質がかえって問題となってしまう。クリストフォレッティさんは地上の要領でカップに口をつけて傾けるが、コーヒーはカップの底にへばり付いたままだ。
重力がないためコーヒーが口元まで降りてきてくれず、加えて塊になろうとする性質が仇となってしまったようだ。カップを動かしてもコーヒーは内部であらぬ方向に移動するだけだ。「うーん......コーヒーが出てこない!」と困り顔のクリストフォレッティさん。
そこで彼女は、「スペースカップを使ってみよう!」とひらめく。カメラに映し出されたのは変わった形のカップで、レストランで出されるカレールーの器(グレイビーボート)のような形をしている。飲み口が円形ではなく、涙型のように細く絞られているのが特徴だ。
>>■■【動画】宇宙飛行士のコーヒー休憩はちょっと変わっていた...無重力環境の専用カップが存在■■
スペースカップで優雅なコーヒータイム
クリストフォレッティさんはカメラにスペースカップを見せながら、「特別な形をしていている」と説明する。「この(飲み口先端の尖った)角度のおかげで毛細管現象が起き、コーヒーがフチまで流れてくる」とのことだ。
先ほどと同じ要領でパウチからカップにコーヒーを注ぐと、毛細管現象で吸い上げられてフチ付近に適量が溜まる。溜まっているコーヒーに口をつけ、あとは軽く吸い込むだけだ。コーヒーが乾いた喉を潤すと、彼女は「できた!」と締めくくり、カメラに再び笑顔を見せた。
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