◆政策判断への貢献期待
「市民科学」という言葉を初めて聞いたのは、昨年11月。東京都市大学の小堀洋美特別教授にお会いした際、市民による生物観察活動から、市民科学の役割という興味深い話になり、魅了された。
あれから半年が経(た)ち、世界は100年に一度という危機の真っただ中にいる。新型コロナウイルスの世界規模の感染拡大で、人々は外出禁止や自粛を強いられ、人が集まるイベントの大半が、中止や延期に追い込まれてしまった。
そんな中、シティ・ネイチャー・チャレンジ(CNC)という世界的な市民科学プロジェクトが、予定通り今月から始まった。米国西海岸で始まり、今年で5回目を迎えるCNC2020には、福岡県福津市を含む日本の3都市と世界の200を超える都市が参加する。
例年であれば、野外に出かけ、スマートフォンで動植物の写真を撮影して投稿し、投稿数や種の数を都市単位で競うという取り組みだ。今年は感染を避けるために数は競わず、自宅庭やベランダ、近所の小道などでの観察に絞る。外出できない今こそ、身近な自然に触れることで生命の力を感じる時間になるだろう。
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CNCでは、市民が撮影した生物のデータは、スマホのGPS機能を介して、いつどこで観察されたかという情報と共に、国際的な生物多様性のデータベースや研究に活用される。また、自治体の生物多様性保全の施策にも生かすことができそうだ。
小堀先生によれば、地球温暖化、生物多様性の減少といったさまざまな環境変化を把握するには、広域的、長期的なデータの蓄積が必要だが、研究者や行政の調査だけでは情報量に限界があり、市民参画の重要性はますます高まっているという。
「ズーニバース」という市民科学のプロジェクトを集めたウェブサイトには、200万人を超えるボランティアが登録し、50を超えるプロジェクトに参加している。南極のペンギン観察は、人気の調査研究の一つだ。世界中のボランティアが、極寒の地に配置された何十台ものカメラが1時間ごとに映し出すペンギンの写真を、ホームページ上で見て、成体か雛(ひな)か卵かを識別し、データを入力する。5歳の子どもでもペンギンの繁殖パターンを追いかけることができるという。
現在、世界中に自宅で過ごす人が急増し、オンラインのツールが普及したこともあって、市民科学を後押しする状況が生まれている。前述のズーニバースでは、4月の最初の1週間で、ボランティア分類の画像データが通常の4倍になったという。学校が休校中の子どもたちが参加できるプロジェクトもあり、科学教育の支援の場にもなっているようだ。
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厚生労働省とLINE社が連携した新型コロナウイルス対策のための全国調査には、これまでに2400万人が回答している。こうした国民の協力を得て大規模なデータが蓄積され、感染リスクの特定の精度が上がっていくことが期待される。
では、市民科学は何をめざすのか。2013年に欧州委員会に提出された「市民科学に関する緑書」には、「科学・社会・政策の協働が進み、根拠に基づく意思決定を前提とした民主的な研究が行われる」ことを掲げている。
未知の部分が多い新型コロナウイルス対策において、わが国では政府関係者、科学者である医療専門家、メディアの協働が機能していたとは言い難いように思う。緊急事態宣言発出の時期になって、ようやく専門家の姿が見えてきた。コロナ後も見据え、より根拠ある政策判断ができる関係構築が急がれる。
【略歴】1958年、津市生まれ。三重大教育学部卒、米イリノイ大経営学修士(MBA)。2017年12月から現職。福岡県男女共同参画センター「あすばる」の前センター長。内閣府男女共同参画会議議員、経済産業省産業構造審議会臨時委員。
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April 27, 2020 at 09:00AM
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